【歯を守る!】 歯周病の治療と予防法を完全ガイド
1. はじめに
歯周病は、歯を取り巻く歯肉や骨に炎症が起こり、最終的には歯を失う可能性のある深刻な口腔内の感染症です。適切な治療とセルフケアを怠ると、重症化するリスクがあります。
本記事では、歯周病の治療方法について、各ステージごとに詳しく解説していきます。
2. 歯周病の基本治療
歯周病の治療は、まずプラークコントロールから始まります。プラークコントロールとは、歯ブラシやデンタルフロスを使って口腔内の細菌を減らすことを指します。次に、歯科医院で行われるスケーリングやルートプレーニングにより、歯石を徹底的に除去します。
2.1 プラークコントロール
効果的なブラッシング方法
- 毛先を確実に当て、歯と歯ぐきの境目に集中的に磨く
- 力を入れすぎず、短い小刷子を使って丁寧に磨く
- 歯間部の清掃には、デンタルフロスを使用する
デンタルフロス
デンタルフロスは、歯ブラシでは届きにくい歯間部のプラークを除去するのに効果的です。
- 約40cmに切ったデンタルフロスを両手の中指に巻きつける
- 糸を歯間に滑り込ませ、歯と歯ぐきの間に沿って上下に動かす
- すべての歯間にフロスを通し、プラークを除去する
2.2 スケーリング・ルートプレーニング
プラーク除去の次のステップとして、歯科医院でスケーリング・ルートプレーニングを受けます。
- スケーリング:歯石(プラークが硬くなったもの)を除去する処置
- ルートプレーニング:歯根表面に付着した歯石を取り除き、滑らかにする処置
この治療により、歯肉の炎症が改善されるだけでなく、新たな歯石の付着を防ぐことができます。
2.3 かみ合わせの調整
歯周病の治療の一環として、かみ合わせの調整も行われます。歯ぐきに過度な圧力がかかると、歯周組織に悪影響を及ぼすためです。歯科医師が、削る箇所を見極めて調整を行います。
3. 中等度歯周病の治療
基本治療で改善が見られない中等度の歯周病の場合は、より積極的な治療が必要となります。FMDや歯周組織再生療法、歯周外科手術などが行われます。
3.1 FMD(フルマウスディスインフェクション)
FMDは、口腔内全体の殺菌を目的とした治療法です。一度に抗生物質の投与と、口腔内の除菌処置を行うことで、歯周病菌の数を劇的に減らすことができます。
3.2 歯周組織再生療法
歯周病で失われた組織の再生を促すのが、歯周組織再生療法です。エムドゲインという薬剤を歯根面に塗布したり、リグロスというタンパク質を使用したりする方法があります。
3.3 歯周外科手術
深い歯周ポケット(歯と歯ぐきの間の隙間)がある場合は、歯周外科手術が選択されることがあります。手術では、歯ぐきを切開して直接的に歯石除去を行うことができます。
4. 重度歯周病の治療
重度の歯周病に対しては、さらに高度な治療が求められます。骨移植手術や歯周補綴治療など、抜歯を回避する努力がなされています。
4.1 骨移植手術
歯周病が進行すると、歯を支える骨が溶けて減少してしまいます。骨移植手術は、失われた歯槽骨を補填し、新しい骨の再生を促す目的で行われます。
4.2 歯周補綴治療
歯周補綴治療では、失われた歯を補うために、ブリッジやインプラントなどの補綴物を使用します。
- ブリッジ: 欠損歯の両隣の健康な歯を支えとして、人工歯を架け橋のように設置する方法です。
- インプラント: 人工歯根を顎骨に埋め込み、その上に人工歯を装着する方法です。
補綴治療の目的は、失われた歯の機能を回復し、審美性を向上させることです。患者さんの状態や希望に合わせた最適な治療法を選択していきます。
4.3 抜歯
重度の歯周病で、歯の保存が難しい状況では、最終的に抜歯を余儀なくされることがあります。ただし、現代の医療では極力抜歯を避ける努力がなされています。
抜歯後は、ブリッジやインプラントなどの補綴治療により、機能の回復が図られます。抜歯を選択した場合でも、定期的な検診とメンテナンスが重要です。
5. 治療後のメンテナンス
歯周病の治療が一通り終了しても、再発のリスクは残っています。そのため、定期的な検診とプロフェッショナルケアを受けることが不可欠です。
5.1 SPT(サポーティブ ペリオドンタル セラピー)
SPTとは、歯周病の治療後のメンテナンスのことを指します。通常、3~6ヶ月に一度のペースで歯科医院に通い、プロの手によるクリーニングを受けます。
5.2 セルフケア
治療の成果を持続させるためには、患者自身によるセルフケアが欠かせません。毎日の丁寧な歯みがきに加え、歯間ブラシやデンタルフロスの活用が推奨されています。
また、喫煙や過度の飲酒、ストレスなどのリスク因子を控えることも大切です。歯科医師の指導に従いながら、生活習慣の改善に努めましょう。
6. まとめ
歯周病の治療は、症状の重症度に応じて段階を踏んで行われます。初期の基本治療から、中等度の歯周組織再生療法、重度の外科手術に至るまで、様々な選択肢があります。
一方で、治療後のメンテナンスとセルフケアこそが最も重要です。定期的な専門家によるケアと、日々の歯みがきを怠らないことで、歯周病の再発を防ぎ、健康な口腔内環境を維持することができます。歯周病との闘いは、一生続く取り組みだと心に止めておきましょう。
7. よくある質問
7.1 歯周病の治療はどのように進められるのですか?
歯周病の治療は、まずプラークコントロールから始まります。次にスケーリングとルートプレーニングを行い、その後かみ合わせの調整も行われます。基本治療で改善が見られない場合は、より積極的な治療として、FMD、歯周組織再生療法、歯周外科手術などが選択されます。重度の歯周病では、骨移植手術や歯周補綴治療も検討されます。
7.2 治療後にはどのようなケアが必要ですか?
歯周病の治療が終了した後も、再発のリスクは残っています。そのため、定期的な検診とプロフェッショナルケアであるSPT(サポーティブ ペリオドンタル セラピー)が不可欠です。また、患者自身によるセルフケアとして、丁寧な歯みがきやデンタルフロスの活用が推奨されます。
7.3 歯周病の予防にはどのような対策が有効ですか?
歯周病の予防には、毎日の適切なプラークコントロールが最も重要です。歯科医師やデンタルハイジニストから正しいブラッシング方法を学び、歯と歯ぐきの境目に集中的に磨くことが推奨されます。また、デンタルフロスを使って歯間部の清掃も行うと効果的です。さらに、喫煙や過度の飲酒、ストレスなどのリスク因子を控えることも大切です。
7.4 歯周病の治療には費用がかかりますか?
歯周病の治療には、基本治療から中等度・重度の治療まで、さまざまな方法が存在し、それぞれに治療費が異なります。具体的な費用については、歯科医院に直接確認する必要があります。ただし、治療を怠ると歯を失うリスクがあるため、適切な治療を受けることが重要です。
札幌 歯周病・予防歯科 院長
歯周病治療および予防歯科を重視し、口腔の健康を目標とした治療を心がけています。
- 日本歯周病学会指導医
- 日本臨床歯周病学会指導医
- 日本糖尿病学会協力歯科医
- 日本歯周病学会認定研修施設
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