顎関節症治療
顎に痛みを感じたら~顎関節症治療~
札幌 歯周病・予防歯科の治療の特徴
顎関節症の治療には可逆的なものと非可逆的なものがあります。非可逆的な治療とは,「切る」「削る」など,行う前の形・状態に戻すことができないものをいいます。可逆的な治療には薬物療法,スプリント療法,理学療法などがあり,体への直接的な侵襲がほとんどないものをいいます。
日本顎関節学会の診療ガイドライン「顎関節症に対する初期治療の診療ガイドライン」においても「咬合調整(かみ合わせの調整)は行うべきではない」という提言がなされています。
また顎関節症は時間経過とともに改善し,治癒していくことが報告されています。
当院では、エビデンスに基づき、非可逆的な治療は極力控え,可逆的な治療を優先して行なうことで顎の痛みの軽減や運動の回復を目指しています。
顎関節症とはどのような病気ですか
- 「口を大きく開け閉めしたときに痛みがある」
- 「口を開けた時に耳の前でガクッ、ゴリなどと音がする」
- 「口を大きく開けられない(縦に指3本以上入らない)」
このような症状がでるのが顎関節症です。
顎関節症は顎関節やそれを動かしている筋肉に痛みや動きの制限が生じる病気です。
そのため、硬い食べ物が噛めない、大きな食べ物が食べにくい、また、あごの音が煩わしいなどの症状が現れることがあります。
かつて「顎関節症」の原因は「咬み合わせ」にあるという考えが定説でしたが、この20年の間の研究により、顎関節症の原因は多因子で、かみ合わせの異常はその中の一つに過ぎないことが科学的に立証されています。しかし、今でも歯列矯正や歯冠修復で顎関節症が治ると考えている歯科医師は多いようです。当院では顎関節治療に対し、かみ合わせ調整や歯冠修復(被せもの)を行うことはほとんどありません。
顎関節症はどのように診査・診断するのですか
顎関節症の診断は、何か1つだけの診査結果で決めることはできません。いくつかの診査結果を組み合わせて総合的に検討して診断します。
当院では適切な治療を行うための各種検査を行っています。
顎の動きの検査
- 開口量測定:お口をどれくらい開けられるかを測定します。通常,4cm弱(指2本半ほど)開けられれば問題ないとされています。
- 顎の横の動きの評価:お口の開け閉め時に顎が右や左にズレて動いていないかを検査します。また,顎を前後左右にどのくらい動かせるかを測定します。
- 顎関節の音の評価:お口の開け閉め時に雑音(カクカク,ジャリジャリなど)が無いかをチェックします。
筋肉や関節の触診
お口を開けたり閉めたりする筋肉や関節周辺を指で押し,どこに痛みがあるのかを探ります。
頬部に指を置き、患者さんに噛みしめてもらうと咬筋が膨隆して位置と大きさが概略的に判ります。次に、リラックスしてもらい、指に少しずつ力を入れて筋肉の凹凸、固さを調べ、硬く、こりこりした部分や厚みのある部分を診査します。筋肉の大きさに左右差があるか、痛いところを押されて痛いのか、ただ押されて痛いだけなのかなどを聞き圧痛の有無を診査します。普段、噛みしめの癖があるといつも使っていることから機能的に肥大しています。また、片側だけで噛む癖があると噛んでいる側の咬筋が大きく、左右の大きさが違って非対称となっています。
レントゲン検査
関節の骨の形に異常が無いかをチェックします。目的により「回転パノラマX線」「顎関 節部側方X線」などの撮影を行います。
他疾患との鑑別、関節障害の確認、関節円板転位の確認等を行います。
顎関節症の原因はなんですか
従来、顎関節症の主な原因はかみ合わせの異常と考えられていましたが、最近では顎関節症の原因は多くの因子が複雑に重なり合い、かみあわせの異常は原因の一つにすぎないと考えられています。
「かみ合わせの悪さ」だけで症状を起こすケースはごくまれであると言えます。
顎関節症の原因として以下のものが挙げられます。これらのうちどれか一つのみが原因となるというより、複数の要因が関与して発症することがほとんどです。
- 日中のくいしばり(TCH:、日中に無意識に行なわれる上の歯と下の歯を接触させる習慣のこと)
- 夜間の習慣:睡眠中の歯ぎしり・くいしばり、うつぶせ寝
- 精神的要因:ストレス、緊張の続く仕事
- 単回の外傷
- 特定のスポーツ、楽器演奏、職業
この中で最も大きな原因は歯ぎしり(グラインディング)、噛みしめ(クレンチング)といったパラファンクションというもので、特に日中、睡眠中のくいしばりが筋肉を緊張させ、顎関節症の発症に大きく影響しています。関節に大きな負担をかけて、関節痛を発症させます。
また、これらの歯ぎしり、くいしばりは精神的緊張状態で強くなり、精神的ストレスが加わると睡眠状態がわるくなり、歯ぎしりが強くなったり、くいしばりが強くなったりします。
顎関節症の治療はどのようにするのですか
まず、知っておいていただきたい世界的にも認められている治療方法の原則があります。それは治療方法を選択する場合に、その治療による効果がなかったときに、患者さんにその治療による被害を残さない治療(可逆的な治療)を選択すべきであるという考え方です。具体的には、かみ合わせを良くするためとして、歯を削る、被せ物をする、歯列矯正をするといった治療(不可逆的な治療)は避けるべきです。このような治療を受けても症状の改善がなかった場合、元の状態に戻すことができません。また、通常このような治療を行わなくとも症状を改善させることができます。具体的にはスプリント(マウスピース)、開口訓練、マッサージや湿布、習慣や癖を修正する行動療法などです。
当院で行う顎関節症の治療法
薬物療法
痛みが強い場合は、消炎鎮痛剤(痛み止め)を処方し症状に応じて服用していただきます。
スプリント(マウスピース)療法
顎関節症の大きな原因である睡眠中の食いしばりやの力は,普通に噛んでいるときの数倍にもなると言われています。食いしばりや歯ぎしりによる関節や筋肉,骨や歯への負担を軽くするため,夜間お休みの時にマウスピースを装着していただく治療法です。これは上顎あるいは下顎の歯列に被せるプラスチックの装置です。これを夜間睡眠中に使用することで、夜間の無意識かみこみで生じる顎関節や筋肉への負担を軽減させます。
理学療法
顎運動訓練,開口ストレッチ:お口を開けにくい症状があるときに行う訓練です。指の力を借りて,ストレッチ的な開口を無理のない程度で数回行います。
冷温湿布法:患部に湿布を貼って血行を良くし,痛みを和らげる治療法です。
低周波療法:「マイオモニター」という機械を使って皮膚の上から筋肉に電気刺激を与え,筋肉をマッサージする治療法です。
鎮痛を目的としたレーザー照射
ご家庭でのセルフケア
顎関節症の痛みや開口しにくさといった症状の改善には、患者さん自身による家庭でのセルフケアが重要であり、そういったセルフケアを積極的に行うことが世界的にも提唱されています。
- 硬い食べ物(フランスパンやスルメなど)や大きな食べ物は避ける。
- 頬杖,うつぶせ寝,長時間のデスクワークなどを控える。
- 日中の噛み締めに気づいたら顎の力を抜く。
- スポーツによる外傷を避ける。
- 十分な休養をとる。
など,顎関節に負担をかけないように心がけましょう。
参考資料:顎関節症の自己チェック
顎関節症の自己チェック いくつか該当する人は顎関節症の可能性あり
- 食べ物を噛んだり、長い間しゃべったりすると、顎がだるく疲れる
- 顎を動かすと痛みがあり、口を開閉すると、特に痛みを感じる
- 耳の前やこめかみ、頬に痛みを感じる
- 大きなあくびや、りんごの丸かじりができない
- 時々、顎がひっかかったようになり、動かなくなることがある
- 人差し指、中指、くすり指の3本を縦にそろえて、口に入れることができない
- 口を開閉したとき、耳の前の辺りで音がする
- 最近、顎や頸部、頭などを打ったことがある
- 最近、かみ合わせが変わったと感じる
- 頭痛や肩こりがよくする
参考資料:顎関節症の発症に関わる生活習慣
顎関節症の発症に関わる生活習慣 該当する数が多いほどなりやすい
- 「歯ぎしりをしている」といわれたことがある
- 起床時、日中、気がつくと歯をくいしばっていることがある
- 食事のときは、いつも左右のどちらか決まった側でかむ
- 物事に対して神経質な面がある
- 職場や家庭で、ストレスを感じることが多い
- 夜、寝付きが悪い、ぐっすり眠れない、途中で目が覚める