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非外科的歯周治療に関する研究

非外科的歯周治療とは、歯周ポケット除去を目的とした歯周治療のうち、歯周外科治療以外の治療法を指します。
従来は歯周基本治療中のプラークコントロールとスケーリング・ルートプレーニングのみを指していましたが、現在はそこに抗菌療法やレーザー療法等を含みます。

歯周病専門外来は、この非外科的歯周治療を主体に行います。重症であっても非外科的歯周治療でほとんどの歯周病は治療可能です。

これは、当院のオリジナルの治療法ではなく、下記の記載の様に世界的な論文で多くの報告があり、科学的根拠(エビデンス)に則った、効果が認められた治療です。どうぞ、安心してご受診ください。

外科的治療 vs 非外科的治療に関する主な臨床研究

  • ミネソタ(Minnesota)グループ(1981~)
    Pihlstromらは、被験者17名のスケーリング・ルートプレーニングと歯周外科処置の効果を4年後、6.5年後、さらに臼歯部と前歯部で比較している。その結果、スケーリング・ルートプレーニングとウィッドマン改良法とも、プロービングポケットデプス(PPD)3mm以下の部位では、PPDとプロービングアタッチメントレベル(PAL)が増加し、PPD4~6mmの部位では、PPDは減少し、PALは喪失せずに維持されていた。一方、PPD7mm以上の部位では、ウィッドマン改良法のほうが、PPDが減少し、PALが獲得されていたが、2年後以降では、治療法間の差異は認められなくなった。また、治療法にかかわらず、6.5年後では前歯部のほうが、PPDが約1mm改善されていた。PPD4~6mmの部位では、臼歯部のほうが、PPDが深く、PALが喪失していた。PPD7mm以上の部位では、前歯部のPPDは減少していたが、PALに部位、治療法による差異はなかったことを報告している。
  • ミシガン(Michigan)グループ(1981~)
    Hillらは、被験者90名に対して、歯周ポケット除去手術、ウィッドマン改良法、歯肉縁下の掻爬術、スケーリング・ルートプレーニングを行い、2年後まで比較している5)。その結果、治療法にかかわらず、PPD3mm以下の部位では、付着のわずかな喪失が認められ、PPD4~6mmの部位では、すべての治療法、とくに、歯周ポケット除去手術とウィッドマン改良法で最大のPPDの改善がみられた。一方、歯周ポケット除去手術では、PALの喪失が、歯肉縁下の掻爬術とスケーリング・ルートプレーニングでは、PALの獲得がみられた。PPD7mm以上の部位では、すべての治療法、とくに、歯周ポケット除去手術で最大のPPDの改善がみられた。しかし、付着レベルに関しては治療法間の差異はみられなかった。すなわち、どのような歯周外科手術を行っても、メインテナンスの段階では、スケーリング・ルートプレーニング以上の効果が期待できないことを報告している。
  • イエテボリ(Gothenburg)グループ(1982~)
    Lindheらは、被験者15名に対して、スケーリング・ルートプレーニングとウィッドマン改良法を行い、2年後8)、5年後9)まで比較している。スケーリング・ルートプレーニングにより、6ヵ月後と12ヵ月後では、PALの改善がみられたが、24ヵ月後には、術前にもどっていた。一方、ウィッドマン改良法では、PALのわずかな喪失(0.3mm)がみられている。単根歯と多根歯を比較すると、単根歯がやや良好な結果を示した。また、良好な口腔清掃レベルが維持できた患者は、PPDがより改善され、PALの獲得がより多く得られた。したがって、患者の口腔清掃状態が長期予後に影響を及ぼしていた。さらに、スケーリング・ルートプレーニングと歯周外科処置に対する分岐点となる歯周ポケットの深さ(critical probing depth, CPD)を評価した10、11)。その結果、CPD値より浅い歯周ポケットでは、処置に伴いPALが喪失した。スケーリング・ルートプレーニングに対するCPD値は、2.9±0.4mm(前歯部2.7mm、小臼歯部2.5mm、大臼歯部3.5mm)、ウィッドマン改良法に対するCPDは、4.2±0.2mm(前歯部4.1mm、小臼歯部4.7mm、大臼歯部4.1mm)であった。したがって、浅い歯周ポケットでは、スケーリング・ルートプレーニングが有効であり、4.2mmより深い歯周ポケットでは、歯周外科処置がより有効であることを示唆した。また、治癒期間とメインテナンス期間時の口腔清掃レベルは、どの治療法を選択するかよりも重要であることも付け加えている。
  • 王立歯科大学(Royal Dental College, Aarhus)グループ(1984~)
    Isidorらは、スケーリング・ルートプレーニング、ウィッドマン改良法、歯周ポケット除去手術を行い、6ヵ月後、1年後および5年後まで比較している。その結果、すべての治療法で、PPDの改善、PALの獲得がみられ、5年後まで維持されていた。とくに、歯周外科手術では、PPDの顕著な改善を認めた。一方、PALの獲得に関しては、スケーリング・ルートプレーニングがより良好な結果を示した。さらに、リコール時に、歯肉縁下のスケーリング・ルートプレーニングを繰り返すことは、歯周病の進行を抑制するためには大切であることを示唆した。
  • アリゾナ(Arizona, Tucson-Michigan-Houston)グループ(1988~)
    本研究は、大学病院ではなく、Tucsonの歯周病専門医での研究である。Beckerらは、被験者16名に対して、スケーリング・ルートプレーニング、ウィッドマン改良法および歯槽骨切除を伴う歯周ポケット除去手術を行い、1年後と5年後まで比較している。その結果、1年後では、ウィッドマン改良法と歯槽骨切除を伴う歯周ポケット除去手術は、スケーリング・ルートプレーニングに比べて、PPDの改善を認めた。とくに、PPD7mm以上の部位で顕著な改善があったが、PPD3mm以下の部位では、歯槽骨切除を伴う歯周ポケット除去手術で、PALの喪失を示した。さらに、3、4年時までは、スケーリング・ルートプレーニングと歯周外科処置で差異を認めたが、5年後では治療法間の差異はないことを示している。
  • ネブラスカ(Nebraska)グループ(1988~)
    Kaldahlらは、被験者82名に対して、歯肉縁上スケーリング、歯肉縁下のスケーリング・ルートプレーニング、ウィッドマン改良法および歯槽骨切除を伴う歯周ポケット除去手術を行い、2年後、7年後まで比較している。その結果、歯槽骨切除を伴う歯周ポケット除去手術により、もっともPPDが減少し、7年後においても維持され、PPDが深い部位では、歯肉縁上スケーリングを除く治療において、ほぼ同じPALの獲得が認められたとしている。PPD5mm以上の単根歯は、臼歯部に比べて、PPDの改善とPALの獲得を認め、根分岐部をもつ臼歯部は、PPDの深化とPALの喪失をきたしたことも報告している。
  • ロマリンダ(Loma Linda)グループ(1983~)
    Renvertらは、スケーリング・ルートプレーニングと歯周外科処置の効果を被験者14名に対して6ヵ月後、被験者12名に対して5年後で比較している。その結果、歯周外科処置のほうが、6ヵ月後では、PPDの改善、PALの獲得がみられるものの、5年後では、PALに差異はみられないことを示した。
  • S.P
    "4 modalities of periodontal treatment compared over 5 years"
    Journal of Clinical Periodontology(1987)
    「4つの異なった術式の5年間をフォローアップした結果、術式による効果の相違は認められなかった
  • Rosling B,Nyman S,Lindhe J
    "The effect of systematic plaque control on bone regeneration in inflabony pockets"
    Journal of Clinical Periodontology(1976) 
    コンベンショナルな術式でも十分に骨再生はおこるが、そのためには厳密なプラークコントロールが必要である
  • Cortellini P,et al
    "Long-term stability of clinical attachment following guidedtissue regeneration and conventionl therapy"
    Journal of Clinical Periodontology(1996)
    「GTRでもルートプレーニングでも予後の良いのはプラークコントロールの良いもの、コンプライアンスのよいもの」
  • 「歯周外科治療と非外科的歯周治療を比較したシステマティックレビューによると、PPCの減少とCALgainに関して、臨床的優位差にならない程度の差であり、非外科的歯周治療は歯周外科治療と同等な治療効果を得ることができる」
     

まとめ:短期間では歯周外科治療の方が改善がみられたが、5年以上の長期観察では、歯周外科治療も非歯周外科治療も改善に差はなかった。どの治療法であっても、良好なプラークコントロールが必須である。

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