🦷歯周病になると腸内細菌叢が乱れて全身に悪影響のおそれ!
「歯周病と全身の病気が関係している」と聞くと、ちょっと驚かれるかもしれません。実は近年、お口の中の環境が、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)を乱す可能性があるという研究が世界中で報告されています。
つまり、歯周病が進行すると、腸内環境が悪化し、それによって全身の健康にも悪影響が及ぶというのです。
これは、歯科だけでなく、内科や消化器科の分野からも注目されている重要なテーマです。
🧬「腸内細菌叢」 ってなに?
私たちの腸内には、実に約1,000種類、100兆個以上もの細菌がすみついています。この細菌たちの集まりを「腸内細菌叢(腸内フローラ)」と呼びます。
腸内細菌は、大きく分けて次の3つに分類されます。
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善玉菌:健康を保つために役立つ菌(例:ビフィズス菌、乳酸菌)
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悪玉菌:体に悪影響を及ぼす菌(例:ウェルシュ菌、大腸菌の一部)
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日和見菌:善玉菌と悪玉菌の優勢に応じてどちらにもなる菌
このバランスが取れていることが、腸の健康、そして体全体の健康を維持するうえで非常に重要です。
😷 歯周病が腸内環境に影響する?
では、なぜお口の病気である「歯周病」が、腸にまで悪影響を与えるのでしょうか?
ポイントは、歯周病菌が腸に届くという事実です。
歯周病が進行すると、**ポルフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)**などの悪玉菌が口腔内に増えます。これらの菌は、唾液に混じって飲み込まれたり、炎症によって傷ついた歯ぐきから血管に入り込み、腸内や全身の組織へと運ばれることがわかっています。
そしてこのとき、以下のような現象が起こります:
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腸に届いた悪玉菌が、腸内細菌のバランスを乱す(=腸内フローラの乱れ)
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腸の粘膜バリアが破壊され、有害物質や菌が血液中に漏れ出す(=リーキーガット)
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全身の慢性炎症や免疫異常が引き起こされる
つまり、歯周病が原因で腸内環境が悪化し、その結果として糖尿病や動脈硬化、認知症、うつ病などのリスクが高まる可能性があるのです。
🩺 実際の研究例
あるマウス実験では、口からP. gingivalisを投与したところ、腸内細菌叢が大きく変化し、腸の粘膜が薄くなったり、炎症性マーカーが上昇したという報告があります。
さらにヒトを対象とした研究でも、歯周病の重症度が高い人ほど、腸内の悪玉菌が増えている傾向がみられるという結果もあります。
このように、**「歯周病菌が腸に悪さをする」**というメカニズムは、単なる仮説ではなく、科学的な根拠をもって裏付けされつつあるのです。
🛡 歯周病予防=腸内環境を守る
私たち歯科医師は、「歯周病は歯を失う原因になるから予防が必要」とお伝えしてきましたが、これからの時代はそれだけでは足りません。
「歯周病を予防・治療することが、腸内環境を守り、全身の健康につながる」
これは、まさに**“お口は健康の入り口”**という考え方を裏付ける事実です。
当院では、歯周病専門医による精密な診断と、科学的根拠に基づいた治療を行っています。さらに、患者さんの生活習慣や食事、免疫状態などもふまえたトータルな予防プランをご提案します。
📝 今日からできるセルフケア習慣
以下のような習慣を意識することで、お口と腸内の健康をダブルで守ることができます。
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正しいブラッシングとフロスの使用(歯ぐきの中までしっかりケア)
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定期的な歯科検診・クリーニング(3~4か月ごとがおすすめ)
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食物繊維や発酵食品(納豆・ヨーグルトなど)を意識して摂る
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甘いもの・精製された炭水化物を控える(歯周病菌の好物です)
📣 まとめ:健康のカギは「口」と「腸」
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歯周病が腸内細菌叢を乱すことがある
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腸内環境の悪化は、全身の慢性炎症・生活習慣病の引き金に
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歯周病予防は、口だけでなく体全体を守る医療
「なんとなく体調がすぐれない…」「お腹の調子が悪いことが多い…」
そんな方は、一度“お口の中”にも目を向けてみてください。
私たちは、あなたの健康を「歯ぐき」から支える専門医として、お役に立ちたいと願っています。
気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください😊
札幌 歯周病・予防歯科 院長
歯周病治療および予防歯科を重視し、口腔の健康を目標とした治療を心がけています。
- 日本歯周病学会指導医
- 日本臨床歯周病学会指導医
- 日本糖尿病学会協力歯科医
- 日本歯周病学会認定研修施設
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